夏の風物詩である「ひやむぎとそうめん」は見た目がそっくりですが、明確な違いがあるのをご存知ですか?
材料、作り方、麺の太さ、長さ、重さなど考えられる違いは複数ありますが、ひやむぎとそうめんの違いは単純に1種類だけ。
当記事はそのひやむぎとそうめんの違いと、太さや値段、味の比較をまとめました!
ひやむぎとそうめんの違い
ひやむぎとそうめんの違いは日本農林規格(JAS規格)による「麺の太さの違い」で決まります。
材料や作り方で分けていないことに驚きですよね。更に、機械で作るか手延べ製法なのかで基準が違います。
機械製法
機械で製造する麺の太さが1.3㎜未満 → そうめん
太さが1.3㎜以上1.7㎜未満 → ひやむぎ
手延べ製法
手延べで製造する麺の太さが1.7㎜未満 → 「ひやむぎ」と「そうめん」どちらを名乗っても良い。
では、麺が1.7㎜以上太い場合はというと、
麺の太さが1.7mm以上→ うどん
幅4.5mm以上厚さを2.0mm未満→ きしめん と呼ばれます。
このように太さを基準にしたり、手延ベ製法と機械製法で分けた理由は、それぞれの作り方に由来します。
太さを基準にした理由
手述べそうめんは小麦粉、水、塩を練って何度も手で引き伸ばし麺を細くしていきますが、ひやむぎは材料が同じでも伸ばした生地を切って麺にします。
明治時代になると製麺機が発明され、ひやむぎとそうめんの違いがあやふやになります。なぜなら、生地を切る製麺機の刃で麺の太さをかえれば、ひやむぎやそうめん、うどんも簡単に作ることが出来るためです。
次第に様々な麺の太さのひやむぎやそうめんが出回り、違いが判別しにくくなりました。そこで基準をつくり曖昧さを解消したのが1968年に太さを基準にしたJAS規格でした。
手述べの太さの由来
大半のそうめんがJAS規格が定めた基準で問題ないものの、江戸時代から続く徳島の名産品「半田そうめん」は麺の太さが1.7㎜前後であり、基準にあてはめると「ひやむぎ」になってしまいます。
伝統の名産品を守るため、2004年にJAS規格が改定し、手述べ製法の麺は1.7㎜未満ならそうめんでもひやむぎでも良いとなりました。
長さや重さに基準はないの?
ひやむぎとそうめんの違いは太さのみで、麺の長さや1パッケージ中の重さによる基準もありません。
ちなみに現在のそうめんの長さは、比較的食べやすい21cm~24cmが多いですが、昔はとても長いそうめんもあったようです。
江戸時代初期のそうめんは長く延ばしたままの長そうめんで、中期に刊行された『狂斎図譜』には、やたらと長いそうめんを苦労して食べている様子が誇張して描かれている。 この江戸時代中期頃からは、長いそうめんを6寸(約19センチメートル)の長さに切り揃え、印紙で巻き止めた上等品の「切りそうめん」が登場している
引用:http://www.nichimen.or.jp/zatsugaku/06_02.html
1束の重さも50gや100gとメーカーで違いがありますが、1人前の目安は100gです。
1束=1人前と考えると量が少ないことも多いので、1束何gなのか確認してから茹でると良いでしょう。
色麺が入っている理由は?
機械製法が進むと、職人の間でもひやむぎとそうめんを見分けるのが大変になりました。
そこで、ひやむぎとそうめんを見分けるために、ひやむぎだけに色麺を入れていたようですね。
現代ではひやむぎに限らずそうめんにも色麺を入れているメーカーが多く、見た目の涼しさや爽やかさの演出を目的としているようです。もちろん一切色麺を入れていない商品もあります。
子供頃、こぞって色麺を選んで食べていたなぁと思いだした方も多いのでは?
それぞれの味や値段の違いは?
では、同じ材料のひやむぎとそうめんで味に違いはあるでしょうか。
麺の太さによって風味や甘さの感じ方が違うとされ、そうめんよりひやむぎのほうが若干甘いという調査結果がでています。
太さによって表面積に対する体積の割合が異なることが理由だと考えられます。太さが細い方が、体積に対する表面積の割合は大きくなります。これにより、太さが細い方が、茹でた時にお湯の中にデンプン(甘味成分)が流れやすくなります。その結果、同じ量の麺を茹でても、茹でた後に食べる麺では、細い方が甘味が低くなるのでしょう
引用:https://ima.goo.ne.jp/column/article/4335.html
よって、3種類の甘みを比較すると麺の太さ順にうどん>ひやむぎ>そうめんとなります。
また手延べの場合、乾燥を防ぐため油が含まれてる場合が多く熟成するのに1~2年寝かせます。それにより機械製造と風味が変わるようです。
ひやむぎは伸ばした麺を切って作ります。ようは「細いうどん」のため熟成という工程がなく、やはりそうめんと風味が違います。
そうめんやっぱり揖保乃糸?!
ところで、そうめんといえば「揖保乃糸」が有名ですよね。著者はそうめんなら揖保乃糸が1番美味しいと思っています。他のそうめんと比較すると味が濃いんですよね。
その揖保乃糸の「手延べそうめん」と「手延べひやむぎ」では、原材料の小麦粉の違いで味も変えているようです。
「そうめんは喉ごし・麺のコシを大事にした小麦粉を使用し、ひやむぎは歯ごたえ、特にモチモチ感やソフト感を重要視した小麦粉を使用しております」
引用:https://a.excite.co.jp/News/bit/20060825/00091156406214.html
揖保乃糸では小麦粉の質や麺の細さ、製造時期によって等級が帯の色で分かれています。
以前、上級の揖保乃糸特級の揖保乃糸を比較したときは、特級のほうが塩気があってとても美味しくかんじました。
また、ひやむぎはそうめんと比較して麺が太い分、とても食べごたえがあります。ただ、個人的にひやむぎは中途半端な太さだと感じています。
手軽に食べるなら湯で時間の短いそうめんが良いですし、お腹いっぱい食べたいならうどんに手が伸びます…。
ひやむぎとそうめんの値段
ひやむぎとそうめんで値段の違いはあるのか、イオンの売り場で比較してみました。
「揖保乃糸」と「きたほなみ」の商品では、ひやむぎとそうめんで値段の違いはありませんでした。
ちなみにうどんも同じ値段です。やはり材料と作り方がほぼ同じなので値段の差をつけにくいのでしょうね。
揖保乃糸は写真のように上級と特級があり、その値段がも違います。
さらに「きたほなみ」のパッケージをみるとそうめんの湯で時間2分にたいして、ひやむぎの湯で時間が4分半と大幅に差があることがわかります。
それだけ太さも違うんですね。
にゅうめん、うーめん、そうめんの違いは?
ひやむぎとそうめんの違いがわかったところで、冬になるとコンビニやスーパーで売られる「にゅうめん」とそうめんの違いも気になりませんか?
実は「にゅうめん(入麺、煮麺)」は奈良の郷土料理名で、そうめんを温かいつゆで食べる場合「にゅうめん」と呼びます。
さらに「うーめん」はそうめんの一種ですが、油を使わない製法と麺が9cmという特徴があり茹でやすく食べやすいそうめんです。宮城県白石市で生産される特産品で白石温麺(しろいしうーめん)とも呼ばれています。
ひやむぎとそうめんの違いまとめ
最後に一覧で比較してみましょう。
比較 | そうめん | ひやむぎ | うどん | きしめん |
太さ | 1.3㎜未満 | 1.3㎜以上1.7㎜未満 | 1.7mm以上 | 幅を4.5mm以上で 厚さを2.0mm未満 |
湯で時間 | 約2分 | 約4分半 | 約10~15分 | 約7~10分 |
※手延べの場合1.7㎜未満はそうめん、ひやむぎどちらでも可。
※材料がほぼ同じのそうめん、ひやむぎ、うどんで値段の差はない。
材料や作り方、見た目が似ているひやむぎとそうめんでしたが、違いは太さだけという単純な区分でしたね。
比較的茹で上がりが早く手軽に食べられるそうめんと、うどんよりは軽めでそうめんより食べごたえのあるひやむぎ。
夏のギフトで人気はそうめんですが、店頭売り場で人気はひやむぎだと言われています。値段が高く高級なイメージのある手延そうめんが贈答用として、手軽にお腹いっぱいにできるひやむぎが一般受けしているのかもしれませんね。
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