ニュースを見ていると「〇〇首相が…」またある時は「〇〇大統領が…」
世界には‟首相”や‟大統領”など、国を代表する人の呼び方がそれぞれ違います。
国によっては大統領と首相が両方いる国もありますし・・・。
呼び方が違うからには役割やどちらかが権限が強いなど、何か違いがあるはずですよね。
この記事では大統領と首相の違いと、両方いる国の紹介と権力比較も一緒に解説していきます。
大統領と首相の違い
大統領とは
大統領とは、共和制国家の国家元首で、国家を代表する機関・人物です。
※共和制国家とは、王制ではない国のこと
国家元首とは、国を代表する最も偉い人を指します。
その権限は、三権(行政・立法・司法)を持ち、権限・対外的にもその国のトップとなります。
大体、国民によって選挙で選ばれることが多いです。
ただ、国によって選出方法は異なります。
首相とは
首相とは、行政機関のトップの大臣、つまり行政のリーダーを指します。
行政とは国によって若干立ち位置が変わるのですが、主に三権分立(立法、司法、行政)の内、立法と司法を除いたものを指し、法律に従って政務を行うところです。
首相はあくまで、行政のリーダーを指す言葉なので、国によって首相の呼び名はバラバラです。
日本で言えば、内閣が行政機関にあたるので、内閣総理大臣が首相の正式名称です。
日本やイギリス、ドイツなど議院内閣制の国では、議会の与党(=多数政党)の党首が、首相に任命されます。
大統領と違い、国民が直接選ぶわけではなく、議員が投票した人物が選出されます。
首相は政府の最高責任者であり、その国のトップではありませんので、首相の権限は国によって様々です。
大統領と首相の1番の違い
この両者を並べてみると、違いが少しずつ見えてきますが、一番の違いは「国家元首」であるかどうかです。
そして、その違いはその国に「王制」が存在するかどうかで変わってきます。
例えば日本は、かつてより君主制であるため、「天皇」が国家元首であると言われています。
君主とは世襲によって位につく統治者の事を指します。
つまり、「天皇」が国のトップであり、「首相」が行政のトップであるという事になります。
首脳会談は政府の最高責任者が行う会議の事を指しますので、日本の場合は天皇ではなく首相が首脳会談を行います。
◆大統領と首相の違い&君主
大統領・・・国家元首で、基本的に国民投票により選出され、権限も大きい。
首相・・・議会で議員により選出される、行政のトップ。
君主(王)・・・世襲(せしゅう)制の国家元首。
議会のある民主主義国家では、象徴として実際の権限はない場合が多い。
ちなみに、大統領と首相が国によって異なるその理由は、その国がどのような歴史を辿ってきたかによって変わります。
元々君主がいた国は、君主を廃止する代わりに大統領が元首となり、君主が存在する国は、その君主を補佐するために首相となったという感じです。
世界には二つの制度がある
ザックリ分けると世界には2つの国家が存在します。
・「立憲君主制」
・「共和制」
「立憲君主制」の君主制とは国王や皇帝、天皇といった、伝統的権威を帯びた君主を国民統合のシンボルとする政治体制です。
「立憲君主制」を敷く代表的な国には、日本、イギリス、スペイン、デンマーク、タイなどがあります。
君主が政治的実権を持たず、民主的な国家運営がされているのが実態です。
ちなみに、同じ「君主制」でも、サウジアラビア、オマーン、カタール、クウェートのように絶対王政を敷く「絶対君主制」もあります。
「共和制」とは、君主ではない元首を持っている政治体制です。
国民が選んだ代表者が、直接政治を動かします。
アメリカの大統領がそうです。
つまり、立憲君主制と共和制との違いは、君主がいる(君主制)か、いない(共和制)かの違いです。
こういった国の事情を背景に、首相と大統領という呼び名が区別されています。
国によって大統領や首相の立ち位置は異なります。
次に国ごとの国家の制度について見てみましょう。
各国の国家体制について
アメリカ(アメリカ合衆国)
◆国家元首:アメリカ合衆国大統領(現:ドナルド・トランプ第45代アメリカ合衆国大統領)
◇政治制度:連邦共和制
⇒連邦制・・・各州ごとに主権の一部があり、各州の地方政府がこれを統治。
そして連邦政府(中央政府)は外交政策などを行う制度。
⇒共和制・・・主権は国民であり、君主がいなくて国家元首がいる制度。
大統領(President)という言葉が初めて生まれたのはアメリカです。
初代大統領は、ジョージ・ワシントンですね。
アメリカの大統領は、行政権を唯一保持しています。
つまり、アメリカの行政は大統領1人に全て任されています。
また、軍の最高司令官としての側面も持っており、軍に関わる全ての権限を持っています。(ただし宣戦布告時は議会の承認が必要です)
こう見ると、アメリカ大統領は絶対的な権限をもっているように見えますが、実際はそんなことはありません。
大統領は議会(立法)とは独立した機関ですので、法律案や予算案を提出することができません。
一応拒否権を持ってはいるのですが、これも議会両院で再可決されれば、大統領の署名がなくても法律は成立します。
また、大統領は「一般教書」というもので、法律を作るよう促すことは出来ますが、議会に対して解散権ももっていませんし、逆に不信任案を受けることもありません。
つまり、アメリカの大統領は、外部に対しては強い力を持っているが、内政に関しては無力であるといえます。
アメリカにおいて絶対的な存在という気がしましたが、意外と弱点も多いんですね。
イギリス(グレートブリテン及び北アイルランド連合王国)
◇国家元首(君主):イギリス連邦王国女王(現:エリザベス2世)
◇首相:連合王国内閣総理大臣(現:テリーザ・メイ首相)
◆政治制度:議員内閣制、立憲君主制
⇒議員内閣制・・・議会で選出された首相によって内閣が組織され、議会の信任に基づいて内閣が存在する制度
⇒立憲君主制・・・君主の権力が憲法によって規制される君主制
イギリスの政治は、単一国家と立憲君主制から成り立っています。
※単一国家とは、中央政府よって統一された国家の事。
「日本」の「都道府県」のように、地方に行政機関を設けることが多いですが、地域の強い権力をもつ連邦制とちがい、単一国家は中央政府の権力が強いのが特徴です。
イギリスの国家君主は、イギリス連邦王国の国王で、1700年ごろから今に渡るまで、国王や女王が国を治めてきました。
しかし、イギリスの憲法に「国王は君臨すれども統治せず(The King reigns, but does not govern)」という言葉があります。
つまり国王は実質的な政治権力を保持しないという事です。
日本と非常によく似た制度ですね。
ドイツ(ドイツ連邦共和国)
◇国家元首:連邦大統領(現:ヨアヒム・ガウク第11代連邦大統領)
◇首相:連邦首相(現:アンゲラ・ドロテア・メルケル首相)
◆政治制度:議会制共和国(連邦制及び議員内閣制)
ニュースなどではドイツは首相のイメージが強いと思いますが、実は大統領もいたんです。
これは大統領に儀礼的な権能のみが与えられており、首相が行政府の長として行政権を執行しているからです。
なので政治の場では、メルケル首相をよく見るということなんです。
このような制度を取っている理由に、かつて大統領の権限が非常に強かった際に、ナチスにその権限を奪われ、政局が混乱したという時代背景があります。
ですので、現在は「中立的な権力」として、首相の任命や、条約の締結などの仕事を行っています。
フランス(フランス共和国)
◇国家元首:共和国大統領(現:フランソワ・オランド第24代フランス大統領)
◇首相:共和国首相(現:ベルナール・カズヌーヴ首相)
◆政治制度:半大統領制
フランスは「半大統領制」で政治を執り行っています。
※半大統領制とは、「議員内閣制」と「大統領制」を組み合わせた政治体制。
これは、議院内閣制の枠組みをとりながらも、より大きな権限を大統領に付与するというものです。
具体的には、議会の解散や、議会の承認なしに法律や条約などを国民投票にかける権限、大統領への弾劾裁判権がないなどがあります。
また、大統領は国民の投票によって選ばれ、そして大統領が首相を任命します。
大統領と首相、共に行政権を持ち、主に首相が内政を大統領が外交政策を担当します。
しかし、全体を見通しても大統領の方が権限は強いです。
なぜこのような制度を取っているかというと、かつてフランスは内閣がころころ変わり、政治が不安定でした。
そこで、1985年に第五共和国憲法(半大統領制)を採用するすることで、大統領の権限をより強くし、政治を安定させたというわけです。
こうやって見ると、アメリカの大統領よりずっと強い権力をフランスの大統領は保持しているんですね。
中国(中華人民共和国)
◇国家元首:中華人民共和国主席(現:習近平 第7代国家主席)
◇首相:国務院総理(現:李克強 第7代国務院総理)
◆政治制度:一党独裁制、社会主義共和国体制
⇒一党独裁制・・・特定の政党による独裁体制
⇒社会主義体制・・・個人主義や自由主義、資本主義に反対し、より平等で公平な社会を目指す体制
中国の国家元首は国家主席にあたります。
国家主席は、中国の議会「全国人民代表大会」によって選出されます。
しかし、中国は共産党の一党独裁制を取っていますので、共産党の党首がそのまま国家主席となります。
国家主席の主な権限は、法律の公布、国務院総理(首相)の指名および要職の任免、戦争の宣告や、外交権などがあります。
また、国家主席は中国の実質的な国軍、中国人民解放軍のトップでもあります。
中国の内閣にあたる組織が国務院であり、そのトップが国務院総理(首相)です。
国務院総理は行政全般の指揮監督を行います。
最近は国際ニュースが取り挙げられること多いので、習近平国家主席の顔を見る機会が多いですが、中国の行政を担う李克強首相の権力も相当のものと言えそうですね。
韓国(大韓民国)
◇国家元首:大韓民国大統領(現:文在寅 第19代大統領)
◇首相:国務総理(現:李洛淵 国務総理)
◆政治制度:共和制国家
韓国の行政権は大韓民国政府にあり、その組織は直接選挙で選ばれた大統領が統率します。
大統領は、国会の同意のもと国務総理(首相)を任命します。
大統領の政務は、法律の拒否権や、国を代表しての外交、条約締結、国分の統帥、大統領令の発令などがあります。
対して、韓国の首相は国務総理と呼ばれ、行政のトップであるとともに、大統領の補佐を行います。
国務総理が行政のみのトップであるのに対し、大統領がその国の外交や軍事全ての責任者なので、その権力の違いは歴然ですね。
日本
◇国家元首(君主):天皇(現:今上天皇 第125代天皇)
◇首相:内閣総理大臣(現:安倍晋三 第96・97代内閣総理大臣)
◆政治制度:立憲君主制、議院内閣制
日本は、天皇が国家君主となります。
現行憲法上では「日本国の象徴であり、日本国民統合の象徴」とあり、政務に直接かかわる事はありません。
主な国事行為として、内閣総理大臣の任命や、憲法改正、法律、条約の公布、国会の召集、外国の大使の接受などがあります。
いずれにしても、内閣の助言と承認が必要です。
一方、行政のトップ(首相)は内閣総理大臣と呼ばれます。これはおなじみですね。
内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で指名されます。
指名選挙は、衆議院と参議院の両院で行われますが、仮に両院で指名者が異なった場合、最終的に衆議院の指名が国会議決となります。
つまり、衆議院の多数勢力(与党)の党首が首相に選ばれるという事ですね。
内閣総理大臣の権限は、他の国務大臣の任命や、議案の提出、閣議の主宰などがあります。
また、日本は軍を持ちませんが、内閣を代表するものとして、自衛隊の最高指揮監督権を持っています。
結局一番偉い地位は何か
世界中を見渡した時に、一番偉いのは誰になるのでしょうか。
一般的に、権威がある順に位を並べると、
皇帝≧法王>王様>大統領>首相となります。
これを現在の世界情勢に合わせてみると、
天皇陛下≧ローマ法王>各国の王様>各国の大統領>各国の首相 となります。
そうなんです。
皇帝と呼ばれる人は、世界中見渡しても、天皇陛下しかいないんです。
そもそも皇帝とは帝国の君主を指します。
帝国とは、複数の国を統治、支配している国の事です。
複数の国にはそれぞれ国王が存在するので、皇帝は王の上になります。
現在の天皇は複数の国をまとめているわけではありませんが、海外で天皇を英語で”emperor”と訳されますが、なぜでしょうか。
こそれは、天皇が紀元前660年に即位し、日本中に存在していた国を1つにまとめ上げ、さらにその系譜が今に続いている、“世界最古の王室”だという敬意の表れから来ているではないかと推測します。
まとめ
・大統領は国家元首で、基本的に国民投票により選出され、権限も大きい。
・首相は議会で議員により選出される、行政のトップ。
一番の違いは「国家元首」であるかどうかで、その違いはその国に「王制」が存在するかどうかで変わってくるということ。
王(君主)がいる国は、大統領はいないということです。
日本で言うと、君主は天皇のことをいいます。
大統領と首相がいる国では、大統領の方が権限が強く、首相は補佐的な役割なところが多いということです。
諸外国の国家制度をまとめてみましたが、どれ1つとして、同じ制度を採用している国はなく、国それぞれ特色があって面白いですね。
この知識を知れば、日々流れる国際ニュースも少し分かりやすく耳に入ってくるようになるかもしれませんね。
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