「寂しい」と「淋しい」は、読み方は一緒でも漢字は違いますよね。
そうなると、「淋しい」と「寂しい」それぞれ使い方が違うのか?
他にも、
・「寂しい」と「淋しい」の意味の違いは何?
・送り仮名で使うのは「み」と「び」のどっちが正しい?
など、疑問に思うことはたくさんあるかもしれません。
そこでこの記事では、「寂しい」と「淋しい」の違いと読み方などを徹底調査しました。
普段は意識しない違いでも、知ってるといざという時に豆知識を披露できるかも。
また、あるポイントを抑えておけば「淋しい」「寂しい」の違いはすぐにわかりますよ。
「寂しい」と「淋しい」の違い
結論をいうと、「寂しい」と「淋しい」の意味の違いはありませんでした。
辞書でも、下記のように同じ意味として掲載されていました。
【寂しい/淋しい(さび・しい/さみ・しい)】
① あるはずのもの、あってほしいものが欠けていて満たされない気持ち。物足りない。
② 人恋しく物悲しい。孤独で心細い。
③ 人けがなくひっそりしている。心細いほど静かだ。
このように、「寂しい」と「淋しい」は意味は同じことが分かりました。
しかし、2つの漢字が違うということは、少なからず使い道に違いがあるはず。
というわけで、「寂しい」と「淋しい」を漢字の面から詳しく調べて見ました。
寂しいの意味とは
「寂しい」の【寂】という漢字は、下記のような意味があります。
・ひっそりとものさびしい
・静かでものさびしい
「ひっそりと」「静か」とあるように、“音が無い・音が少ない様子”のことを【寂】という漢字は意味しています。
人気(ひとけ)がなく、シーンとしている時、人は心細く感じますよね。
そういういった、静かな状況で心細く感じる時のような“状況に対して”は「寂しい」という言葉が合っているでしょう。
では「寂しい」を実際に使う際の例を紹介します。
<寂しい>の使用例
・過疎が進んでいる地域は人気(ひとけ)がなく寂しい。
・知り合いがいない土地で、一人で暮らすのはとても寂しい。
続いて、【淋】という漢字にスポットを当ててみましょう。
淋しいの意味とは
「淋しい」の【淋】という漢字は、このような意味があります。
・水をそそぐ。したたる。
【淋】という漢字には「さみしい」という意味はまったくありませんでした。
では、なぜ【淋】という字が「さみしい」という意味になったのか。
それは、【淋】の部首がさんずいというところに理由があります。
さんずいは“水”を意味し、【淋】という字は、「水が注いだりしたたるさま」が転じて「長雨」のことを指すようになりました。
【淋】を「さみしい」意味に用いるのは日本独特の用法で、おそらくは淋雨(梅雨などの長雨)に降り込まれて「行き場のないわびしさ」から連想したとされています。
そして「雨の水=涙」と転じ、“涙が出る位くらい気持ちがさびしい時”など、自分の感情面に対して「淋しい」を使うのが一般的です。
“涙”が使い分けのポイント
「寂しい」と「淋しい」の使い分けのポイントは“涙”にあります。
「寂しい」は風景等の客観的な情緒に対して。
「淋しい」は自分の感情面に対して。
静かで、音がないということは、人が少なくて孤独を感じ、心細いということですよね。
ただ、その孤独は泣くほどの孤独ではありません。(小さな子供は別として)
ところが孤独が高じ、賑やかに暮らしていた頃や、周りにいつも友達や家族がいるのを思い出すと、涙が出てくる時ってありませんか?
また、“愛する人と別れた後”や“大事な人に先立たれた後”の孤独は、泣けてくるほど悲しいし「さみしい」ですよね。
そんな、涙が目に浮かぶほどだったり、涙を流すほどの時は「淋しい」を使います。
ところが、そんな使い分けも必要ないケースもあり、それは「常用漢字」か否か。
続いてはそのケースをご紹介します。
「淋しい」は常用漢字では無い
実は「寂しい」は常用漢字で、「淋しい」は常用漢字ではないそうなんです。
なので、常用漢字をメインに使う教科書や、新聞テレビのようなメディアでは「淋しい」は使われないということ。
さらに、読み方も「さみしい」ではなく「さびしい」が常用漢字の読み方。
そのため、「寂しい(さびしい)」が教科書・テレビ・新聞・公文書などで使われます。
じゃあ「淋しい」は使えないんだったら、意味や使い分けは覚えなくていいのでしょうか?
なんてことはなく、“常用漢字”は膨大な漢字の語彙や用法に制限を加えるもので、強制ではありません。
ただ沢山ある漢字を絞らないと、使うときに迷うから制限しているわけです。
そのため、小説や漫画、履歴書など、常用漢字を使わなくていいものには、「淋しい」は使えるので、意味に合わせて「寂しい」と「淋しい」を使い分けていきましょう。
「さみしい」と「さびしい」読み方はなぜ2つあるの?
まず、最初に使われていたのは「さびしい」という読み方の方です。
奈良時代の万葉集に「さぶし」という言葉が多く使われていました。
「さぶ・し」・・・心があれ荒すさぶ、勢いが衰える、古くなる
【語源】・・・「錆(錆び)」心が満たされない思いを鉄が錆びる様子に例えた。
そんな「さぶし」が平安時代になって「さびし」となり、それが中世末期ごろから「さみし」と変化して、「さびし」と並んで用いられたようです。
古くからある「さびしい」を標準語とする見方が強かったようですが、最近は「さみしい」も「さびしい」同様に使われるようになってきてるそうですよ。
「さびしい」と「さみしい」の「び」と「み」はどちらを使っても間違いではありませんね。
言葉の変化は他にも
「さび(bi)しい」から「さみ(mi)しい」のように、「b」の音から「m」の音、または「m」の音から「b」の音への変化は多くあります。
目を・・・「つむる」→「つぶる」
煙・・・「けぶり」→「けむり」
頭・・・「つぶり」→「つむり」
このように、昔から使われてきた言葉が時代を経るごとに変化することは良くあることだそうですね。
そして変化した言葉も新たに意味を持ち、普通に使われるようになるというのは面白いことだと思います。
まとめ
以上「寂しい」と「淋しい」の違いと読み方をご紹介しました。
あらためて今回の調査結果をまとめると・・・
「寂しい」と「淋しい」の意味の違いは無いという結果でした。
しかし、それぞれ持つ漢字の意味に沿って使い分けるのがベストで、「寂しい」と「淋しい」の使い分けは、ポイントは“涙”にあります。
「寂しい」は、“田舎の夜は人気(ひとけ)がなく孤独”というような、風景等の客観的な情緒に対して。
「淋しい」は、“愛する人と別れて感じる孤独感”のような自分の感情面に対して。
そして、常用漢字に登録されているのは、「寂しい(さびしい)」の方。
したがって、教科書・テレビ・新聞・公文書などでは「寂しい(さびしい)」の方を使いましょう。
ですが、小説や漫画・履歴書など、常用漢字を使わなくていいものには、「淋しい」は使えます。
また、「さみしい」と「さびしい」の「み」と「び」はどちらも正しいので、このあたりは好みになりますね。
今後は意味に合わせて「寂しい」と「淋しい」を使い分けていきましょう。
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