「コンプライアンス」という言葉。
社会人の方は特に聞き覚えがあると思いますが、実際言葉の意味を分かっている方はどれくらいいるのでしょうか。
よくバラエティ番組でも、「コンプライアンスが厳しいから」という会話が飛び交っていると感じます。
一見聞き覚えがある言葉でも、実は「コンプライアンス」の言葉の意味は色々あるんです。
そこで、この記事では「コンプライアンス」の意味を簡単に解説していきます。
コンプライアンスの意味と使い方
コンプライアンス【compliance】とは英語で「命令・要求に従うこと」という意味。
日本語では法令遵守と訳されることが多いです。
企業においては、定められた法律や規則を守って経営を行うことを指します。
しかし、現代の企業が
「当社はコンプライアンスを重視した経営を行っています」
と言う場合、単に法律や条例を守るだけでなく
その背景にある法の精神や社会良識といった「社会規範全般」
さらには社内規則や業務マニュアルなども含めた幅広い規則を遵守していく姿勢を表していると考えるべきです。
なぜなら、仮に法律に違反していなくても、
法の抜け穴をかいくぐるような行動をとれば非難が殺到。
これは、法令違反を犯したのと変わらない影響を受けることが十分に予想できるからなのです。
コンプライアンスの使い方
使い方としては
「法律(ルール)を守ってるよ」=「コンプライアンスを重視してるよ」
と言い換えるくらいで、日常ではそこまでコンプライアンスの使い方の幅は広くないイメージがあります。
企業が新入社員に対して
「コンプライアンスの教育を徹底してください」
などという使い方をする場合は「知らなかった」では済まされないのでルールをしっかりと把握してもらうことで伝えたりしますね。
コンプライアンスが重視され始めた背景
企業が法律に沿って経営しなければならないのは、当たり前のことです。
しかし、日本でコンプライアンスが重要視されるようになったのは、2000年代以降のこと。
コンプライアンスの歴史は意外に短いんです。
なぜ急にコンプライアンスが重視され始めたかというと、近年相次いでいる企業の不祥事が関係しています。
たとえば、顧客のメールアドレス・パスワードの流出や、建物の耐震基準偽装
、食品の産地偽装などもコンプライアンス違反に該当します。
コンプライアンスに違反すると、
・消費者の信頼を失う
・最悪の場合経営が続けられなくなり倒産する
・取引先や顧客にも大きなダメージを与えてしまう
考えただけでもゾッとしますよね。
このような最悪の事態を避けるためにも、コンプライアンスという考え方が重要になります。
コンプライアンスの違反事例
◆偽装事件
・船場吉兆事件≪期限切れ食品、食品産地偽装、食品使い回し≫
2007年、船場吉兆が賞味期限切れ食品を販売していたことが発覚。
そして、産地を偽装して販売したり、食べ残しを使い回していたことが次々と発覚し、廃業を余儀なくされました。
・三菱自動車事件≪リコール隠し、燃費データー偽装≫
リコールにつながる車両の不具合を届け出ず、2002年に2件の死亡事故が発生。
2005年には、エンジンオイル漏れの不具合を把握していたが5年以上リコールを届け出ず。
2016には、軽自動車の燃費を実際よりも良い数値として、虚偽のデーターを国土交通省に提出していたことが発覚。
一連の不祥事により、三菱を立て直すべく、日産・ルノーグループの傘下に。
◆不正受給
・震災関連の助成金を不正に受給
2016、事業用大型プリンターの製造・販売を主力とする株式会社ルキオは、
工場を新設するにあたり、社長自らが納入業者に虚偽の書類作成を指示して機械代等の購入費用を水増請求させ、
「ふくしま産業復興企業立地補助金」を不正に受け取ったことが発覚。
信用が悪化した同社は、資金繰りに窮し、2017年に約20億円の負債を抱えて、事業を停止しました。
◆労働環境
・過労死≪女性新入社員が自殺≫
2017年、大手広告代理店株式会社電通が違法残業をさせたとして東京簡裁に起訴された。
この事件では、2015年、新入社員の女性が過労死自殺してしまう事態に。
◆食品の衛生管理に問題があったケース
・不二家事件
2007年、不二家が、賞味期限を過ぎた牛乳を使用しシュークリームを製造していたこと発覚。
それ以外の食品衛生管理の不備も判明し、製造販売の休止を余儀なくされる。
◆個人情報の流出
2014年、通信教育・出版事業の株式会社ベネッセコーポレーションの
3500万件にのぼる膨大な顧客情報が不正に持ち出されていたことが発覚。
同社がシステムの保守を委託していた会社の派遣従業員が、データを持ち出し、売却していたものでした。
ベネッセは、被害者でもありましたが、見舞金の支出や顧客の流出などで、大幅な赤字に転落しました。
芸能界のコンプライアンスとは
昭和のバラエティー番組では、少々過激な事も許された時代。
ですが最近ではものすごくコンプライアンスに気を付けているんです。
視聴者が真似したときに、「体や精神に危険や害が及ぶもの」「著しく社会的に迷惑をかけるようなこと」などは徹底的に排除されています。
具体的に言うと、
・特定の人をバカにする
・過剰な罰ゲームなどイジメ行為に流用できるような内容
・子供、動物への虐待と取られるような内容
・食べ物を粗末にする内容
・お色気系
などはバンバン自粛されています。
昨今では、‟ネットで炎上したらやめる”
‟一部の人達の過剰なクレーマーに対応する”
などの風潮があるので「誰からも批判されない当たり障りのない内容」のものしか放送されていない気がします。
一般人を対象とした過激なドッキリ番組もなくなりましたし、心霊番組が減ったのもコンプライアンスが原因かと。
コンプライアンス違反の防止策
コンプライアンス違反の防止策は、3つの柱からなります。
1.違反を許さない強い決意をトップが示す
最も重要なのは、経営トップがコンプライアンス違反は許さないという揺るぎない決意を示すこと。
どのような施策を行おうとも、それが格好だけに終わり、
本音ではルールよりも目先の利益を求めていると従業員に思われてしまえば、企業風の改善は望めません。
コンプライアンス保持は
企業価値を守り、株主を守り、従業員の生活を守るものである。
したがって、利益追求とコンプライアンス保持は車の両輪であることを、トップが力強く宣言し、従業員の意識を変える必要があります。
2.コンプライアンス保持の専門チームを設置
次にチーム体制です。
従業員にコンプライアンス保持を言うだけで、あとは個々人の判断に委ねてしまったのでは
精神論を伝えたに過ぎず、何らの効果も望めません。
必ず、コンプライアンス保持を担当する部署を設ける必要があります。
大きな組織ならば、外部の弁護士を参加させることが望ましいですが、
人員に余裕がなければ、兼任体制でも良いでしょう。
コンプライアンス担当チームは、重要な役割。
名ばかりのものにならないよう、できれば社長直属として
通常のラインからは独立した部署とすることが望ましいです。
コンプライアンス担当チームは、
・社内ルールの作成の統括
・コンプライアンス関連文書の管理
・コンプライアンス教育の計画と実施の統括
・従業員からの相談、報告の受付
など、コンプライアンスに関する業務を総合して担当します。
3.社内ルールの策定とメンテナンス
最後に、ルールの明確化です。
◆法令については、業務に関連する法令とその資料を集約。
・・・従業員がすぐにアクセスできるよう、コンプライアンス担当チームが情報を管理します。
◆各事業所、各部署において、生じ得る違反リスクの洗い出しを行います。
・・・これを社内ルール化し、従業員教育を通じて、これを徹底します。
これらも、コンプライアンス担当チームが統括します。
こうして出来上がったルールは、いわば企業を守るための財産とも言えます。
一度、作成して終わりではありません。
常に、ルールのメンテナンスを行うことによって、より実効性のある規範となってゆくのです。
そのためにも、各部署から問題となった事例を報告させ、コンプライアンス担当チームが集約してゆく必要があります。
まとめ
コンプライアンスとは英語で「命令・要求に従うこと」という意味。
日本語では法令遵守と訳されることが多い。
企業においては、定められた法律や規則を守って経営を行うことを指します。
現代では企業活動の他にも、コンプライアンスを並行して守ることが当たり前の時代。
バラエティ番組では、コンプライアンスを意識しすぎてつまらなくなっている声が上がっていたりと、難しい時代になったと感じます。
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