ドラマや落語、時代劇などで「いとさん」「こいさん」「ごりょんさん」といった言葉を聞いたことがありませんか?
この言葉の語源は、江戸時代から近代初期にかけて大阪市船場の商人のあいだで使われていた「船場言葉」です。
現代の大阪では使われなくなりましたが、ドラマや落語、時代劇などで聞く機会があってなんとなく意味を知っているけど語源までは知らない方が多いかもしれません。
当記事では、この「いとさん」「こいさん」「ごりょんさん」の意味と語源を解説していきます。
いとさんの意味と語源
いとさんは「お嬢さん」と言う意味になります。
語源は両親からみて「いとしい人」「いとけない人」から来ており、商人(良家)の娘に対して使われていたようですね。
同じように「とうさん」「とおはん」と呼ぶ場合も「お嬢さん」の意味になり、「いとはん」の「い」が抜けたものになります。
元々は男女関係なく「子供」という意味で、大阪以外でも使われていた言葉でした。
こいさんの意味と語源
こいさんは「小さいお嬢さん」という意味で末娘に使われる言葉です。
語源は「小(こ)」+いとさん。こいとさんが省略されて、こいさんと呼びます。
ただし、複数いる場合は「姉いとはん」「中いとはん」「小いとはん」や、真ん中という意味で「なかいとはん」などで使い分けをします。
「いとさん」「こいさん」の使い分け
姉妹が複数いる場合の「いとさん、こいさん」と呼び方を表にしてみました。
・2人姉妹の場合
長女 | いとさん、いとはん |
次女 | こいさん、こいはん |
・3人姉妹の場合
長女 | いとさん、いとはん ※あねをつける場合も。 |
次女 | なかいとさん、なかいとはん |
三女 | こいさん、こいはん |
・4人姉妹の場合
長女 | いとさん、いとはん ※あねをつける場合も。 |
次女 | なかいとさん、なかいとはん |
三女 | こいさん、こいはん |
四女 | こいこいさん、こいこいはん |
「○○はん」と「○○さん」の違いは?
「はん」と「さん」は直前の音によって使い分けがされます。「い」「う」といった「お段」や「い段」で終わるときは、「はん」ではなく「さん」になります。
ネイティブな大阪人は発音から自然に使い分けができますが、そうでない他県の方は使い分けが難しいようですね。
男の子はなんて呼ぶの?
男の子の場合の呼び方もあります。男の子は「ぼんぼん」を使います。
語源はぼん(坊)の少し丁寧な言い方からです。
また、お金持ちの息子に対して「いいとこのぼんぼん」と使われる語源はここから来ています。
長男 | ぼんぼんさん、あにぼんさん |
次男 | なかぼんさん |
三男 | こぼんさん |
ごりょんさんの意味と語源
最後にごりょんさんの意味と語源ですが、ごりょんさんは「奥さん」という意味です。
語源は「御寮人」からで、身分や地位が高い人、またその子女を敬う呼び方(○○の方、御館様など)からです。
戦国時代後期には貴人の娘や妻に使われる事が多くなりました。
そして、近代の大阪市船場の商人では「奥さん(若奥さん)」という意味で使われ、ごりょんさんに対して旦那さんという意味で「だんさん、だなはん」が使われていたようです。
ちなみに男の子が大人になると「ぼんぼんさん→わかだんさん」に、その妻は「わかごりょんさん」となります。
実は歴史を感じる言葉
「いとさん」「こいさん」「ごりょんさん」の語源は、船場商人一族へ呼びかけの呼称で、それぞれ一族の娘、息子、妻という意味でした。
船場言葉は丁寧で上品な表現が求められた商人達の間で広まり、京言葉を多く取り入れて独自の穏やかな言葉へ発達したものです。
明治以降は教育や環境の変化で廃れてゆき、今では落語やドラマなど限られた状況でしか残っていません。
戦国~江戸時代から近代初期に使われた長い歴史を感じる言葉です。時代にあわせた様々な形で後世に伝えていけるよいですね。
以上、「いとさん」「こいさん」「ごりょんさん」の意味と語源を紹介でした!
明治以降は教育や環境の変化で廃れてゆき
となっていますが、
太平洋戦争頃迄は余り変わっていないと思います。
戦争を境に使われなくなったと思われます。
大阪では、いとさん とは言いますが、いとはん とは言いません。
こいさん とは言いますが、こいはん とは言いません。
京都のことは知りませんので、京都ではそう言うのかもしれませんが。
船場、島之内の言葉ではありますが、母は大阪の町から少し京都よりの所で育ちましたが、言葉使いは同じです。
母の実家は庄屋で商家ではありませんが、御寮人さん、いとさん、とうさん、こいさんというのは大阪の町と同じです。
ちなみに、母は小作の人から こいさん と戦前まで呼ばれていました。